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昭和36年4月 中学1年の新学期を迎える、雪解けの季節である
1級上の先輩に誘われ、岩魚釣りに出かける事になった
連れは学年のさほど変わらない、4〜5人の子供達である
例年であれば、まだまだ雪に埋もれているはずの道筋だが
この年の冬は雪が少なかったのか、避難所までの道中に残雪の記憶が無い
目的の沢は大坪川に添って軌道上を4km程下った「避難所の沢」である
坪川地区から1時間程歩くと、下流の大坪川が、大きくカーブする手前に、木橋が見えてくる
その向こうに、冬季でも 管理人が常駐している、駅舎の様な小さな建物が、一軒
玄関を開けると、畳と板張りの簡素な室内、
壁に掛けられた、上北鉱山に繋がる連絡電話機が一つ
興味本位に、子供たちは、あれこれ いじりまわし、悪ふざけが始まる、
が、ここで 「やめろ!」先輩の一言で、統制が取れるのが ちょっと面白い
沢に入るとさすがに、あちこちに残雪が目立ち、水面をも覆いかぶして,今考えると危険極まりない状況である
先輩以外の子供たちは、全くの初心者、釣り針の結び方も昨日習ったばかりである
竿先の糸の操りも、まだ要領を得ず、竿を振る度に糸が竿先にからまる
沢の左手に細い支流が付いている、残雪が細流の70%を覆いかぶし,水面がわずかに顔を覗かせている
竿は竹竿で4本継ぎ、道糸2号、ハリス1号そして板鉛に針7号
餌は昨日、皆で土から掘り出した「ミミズ」である
小さな水溜りにそれを、ほうり投げ込むが、なかなか思い道理に、着水しない
工夫をこらし何度も竿を振り込む中、ようやくその水溜りに着水する事が出来た
その時、いきなり黒い影が走る
即座に竿に伝わる、初めての魚信
全身が興奮と歓喜に震える
獲物は必死で覆われた雪の深場へ逃げ込もうとする
力任せに引きずり出した岩魚は勢い良く針から外れ
脇の残雪の上に放り投げられ、黒い魚体が小踊りしている
逃がしてなるものかと、飛びつき両手で掴み込む、
18cm位かな
黒ずんだサビのある魚体は細っそりしているが
今でも思い出す、私の初釣果である
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