火箱沢

 
 八甲田山系の
前岳に源を発し青森市内に流れ込む横内川

 昭和59年に日本一おいしい水道水と評価された「横内浄水場」は明治42年に日本で13番目に作られた浄水場である、

 火箱沢、元小屋沢、西国沢、雲谷沢、はその「横内浄水場」上流部に湧き出る、ブナとヒバの原生林に抱かれた、青森市民の宝の水瓶である

 火箱沢は青森市内から国道103号線を八甲田山へ向かって車で30

 萱野茶屋真下に流れる小さな渓流である




 623日 従兄弟のKさんと 森林浴を兼ねこの火箱沢を散策する事となった

 萱野茶屋から少し下った大きな原っぱの中、森林管理用の山道であろうか、細いふみ跡を頼りに、沢の方向へ下って歩く

 観光道路でもある国道103号線(八甲田ゴールドライン)の車の往来は、平日においても途切れる事がない

 山道をポツポツと歩を進めると、徐々に車の騒音が薄らぎ、浄化された自然の空間に導かれて、人間社会と森の聖域の間(はざま)に足を踏み入れる、

 二人を包み込む静寂の森、自然と一体となる不思議な感覚、

 緩やかな下り坂の蕨畑を、二人はゆっくりと歩いた、時期はずれの、蕨の二番穂が所々に目に入り、足が止まる

 原っぱの先はブナの林に一変し、細い山道は徐々に勾配を増し、谷間の沢へとジグザグに降下する

 沢に辿り着くと冷たい冷気が、二人を包み込み、汗ばんだ熱気が消えてゆく

 辺り一面は山菜の宝庫である、

 川の流れを目前に「釣キチ」の私は、早くも、気持ちが高鳴る




 実は相棒のKさんに岩魚釣の醍醐味を体験してもらおうと、岩魚釣の計画をし、初心者でも釣りやすい、この渓流を選んだ訳である、

 しかし相棒の興味は、渓流沿いの山菜に、すっかり心を奪われた様である

 計画は少し外れてしまったが、私は「岩魚釣」 相棒は「山菜取り」と

 目的を異にして、それぞれ楽しむ事とし集合場所は、山道と渓流の合流点と言う事となった



 
 火箱沢は以前
2度程入渓した記憶があるが、この度は実に10年ぶりの再会である

 渓相も流程も穏やかで、岩魚の生息条件もまずまず、

 ビギナーにも、十分楽しんでもらえる1渓だと確信している場所である

 川幅1mにも満たない、小さな渓流であるが、平場の落差の少ない渓相は

 一本川で魚止めの小さな滝まで、丹念に釣れば23時間は楽しめる流程の長い

 川である




 時計を見ると午後
4時を過ぎている、魚止めの滝に辿り着くには、時間が無い

 まずは第1投、「つんつん」とした当りに、12cmの小魚が、ハリス0.6号に元気よくぶら下がる

 離れた相棒に「親指と人差指」で小物であるのを伝え、リリース

 続いて20cmクラスが、入れ食いで釣れ、コンビニの小さなビニール袋にゲットする

 その後も、的確なポイントをせめて、連続ヒット、たちまち小さなビニール袋の中は元気な岩魚でいっぱいになる、

 少し欲が出てきて、相棒に大きいビニール袋に取り替えてもらい、足早に上流域を目指す




 この沢の
2km上流に落差2.5mぐらいの魚止めの滝がある、

 その位置は後藤伍長方面から下ってくる40号線と国道103号線の出会い付近にある小さな橋の下である

 この川を橋まで釣り上り、帰途はこの国道を利用して萱野茶屋へ引き返すことが出来るのだ

 実はこの魚止めの滝上に10年前、7〜8匹の岩魚を放流しており、その後の結果も気になる所であります、

 滝上はかなり水量も少なくて、放流された岩魚にとっては 有りがた迷惑だったかも




 渓流に於いては、岩魚の天敵とされる生き物は、殆どいないと思われますが、一つあげるとすると、それは「カワネズミ」である、

 体長10cm程の小さなモグラに似た体系、泳ぐ時、指を水かきの様に広げて、

 コレが実にすばしこい泳ぎ、水中では体毛が光を反射して銀色に光って見えます

 なにしろ食欲旺盛で、一日中 水中昆虫や、サンショウオウ、岩魚の稚魚など食す雑食生らしい、たまにしか、出くわすことが無い「カワネズミ」だが

 この川には、いた、水中を魚よりすばやく潜水し小魚を追いかけ、岩魚の小魚が

 勢いあまって、水中から陸に飛び出している様を目の当りにし

 岩魚の天敵、発見 と再確認した次第である




 この日は入れ食いが続き、前回と比べ、魚影の濃いのに少し驚いて、放流の効果がこの釣果に現れているのかなと嬉しく思った

 さて、1時間を過ぎたころで、ビニール袋も、一杯になり、相棒も気になり引き返す事にした

 山菜の束を横に、待ちくたびれた、Kさんの姿を発見、お互いに今日の収穫を称え

 引き返すことにした




 ブナ林を抜けると、又大きな原っぱである、日暮れにはまだ時間があり、欲が出た二人は蕨取りに夢中になる、原っぱに足を踏み入れると、四方に

 点在して面白いように採れる、時期外れの蕨

 蕨畑の草原は、林道から外れて、奥へ奥へと広大に続いている、

 蕨に誘われ、いつの間にか二人は、方向を失ってしまった

 さっき歩いていた山道が全くわからなくなってしまったのだ

 広大な草原の中、二人を大きく取り囲む、ブナ林と松林、その奥には八甲田山、




 殆ど平らな大地、地平線は
360度の草原の真ん中、もし貴方がある方向へ向かっていたとして、仮にそこで目隠しをさせられて1回転したとしたら、

 貴方は又目的ある方向へ正しく、進むことが出来るでしょうか?

 途方に暮れる二人!!!!

 進むべき方向が全くわからない、私は、少しパニックなった、

 だが私の不安は、間もなく解決した、Kさんが、「あっちの方だよ!」

 草原は平らだが、指差す方向だけが周りのどの方向より小高く感じられた、

 なるほど、我々は国道方面からゆったりと坂を降りてきたのだ

 山道を探すのを諦め、Kさんの勘を信じ、ひたすら蕨と草原を掻き分ける

 ブナ林の切れ目から国土へ続く山道が見えてきた、国道を走る車の騒音が次第に大きくなり、

 森の聖域から抜け出し人間社会の現実へ無事帰還出来た瞬間である

 Kさんの歳の功に感謝感服  (^^)